弁理士試験 短答 過去問 令和5年度【条約】3に行きます^^
これも条約1+2に引き続き、PCTからの出題!
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弁理士試験 短答 過去問 令和5年度【条約】3
令和5年度弁理士試験
短 答 式 筆 記 試 験 問 題 集【条約】3
特許協力条約に基づく国際出願に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いくつあるか。
(イ) 出願人以外の国際予備審査の請求により、国際出願が国際予備審査の対象とされる場合がある。
(ロ) 国際予備審査に当たっては、請求の範囲に記載されている発明は、所定の基準日に当該技術分野の専門家にとって規則に定義する先行技術からみて自明のものではない場合には、進歩性を有するものとされるが、所定の基準日は、常に国際予備審査の対象である国際出願の国際出願日である。
(ハ) 国際予備審査に当たって、国際調査報告に列記されたすべての文献を考慮に入れる必要はない。
(ニ) 請求の範囲が国際調査報告の作成されていない発明に関する場合であって、そのため国際予備審査の対象とならないときは、国際予備審査報告にその旨を表示する。
(ホ) 締約国の選択が優先日から 19 月を経過する前に行われた場合には、特許協力条約第23 条の国内手続の繰延べの規定は、当該締約国については適用されず、当該締約国の国内官庁又は当該締約国のために行動する国内官庁は、優先日から 30 月の期間の満了前に、国際出願の審査及び他の処理を開始できる場合はない。question.pdf (jpo.go.jp)
1 1つ
2 2つ
3 3つ
4 4つ
5 5つ
げげ、いくつあるか問題・・・
コレは無理かも・・・
いくつあるか問題だと全部みなきゃいけなくって敷居が高いのですが、
ポイント押さえたら解ける問題もあるので、一緒に押さえていきましょう!
イ
(イ) 出願人以外の国際予備審査の請求により、国際出願が国際予備審査の対象とされる場合がある。
えー、どうかなあ・・・
日本の場合と比較してみよ~
日本の特許出願の場合って、出願審査の請求は第三者でもOKだったよね!
なら、いけるんじゃない??
残念ながら、国際予備審査の請求は「出願人」のみできるとなっています。
順に見ていきます。
まず、日本の特許出願の場合は、確かに出願審査の請求は何人もOKとなっています(∵48条の3)。そして、第三者から出願審査の請求された場合は、その旨を出願人に通知すると言う規定もあります(∵48条の5第2項)
条文はこの通り
(出願審査の請求)
第四十八条の三 特許出願があつたときは、何人も、その日から三年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。
第四十八条の五
2 特許庁長官は、特許出願人でない者から出願審査の請求があつたときは、その旨を特許出願人に通知しなければならない。
特許法 | e-Gov法令検索
そして、国際予備審査の請求はどうなっているかというと・・・
特許協力条約31条(1)
第三十一条
特許協力条約 PCT Treaty (Japanese) (wipo.int)
国際予備審査の請求
(1) 国際出願は、出願人の国際予備審査の請求により、この条及び次の諸条並びに規則の定めるところにより国際予備審査の対象とする
ということで、「出願人」のみが請求できることになっているのです!!
えー、なんでそうなってるの?
まだ国際段階だし、任意の手続きなので、「出願人」しかできないと覚えましょう!(多分)
(イ) 出願人以外の国際予備審査の請求により、国際出願が国際予備審査の対象とされる場合がある。
答え×
理由:「出願人」しか請求できない為(特許協力条約31条(1))
ロ
(ロ) 国際予備審査に当たっては、請求の範囲に記載されている発明は、所定の基準日に当該技術分野の専門家にとって規則に定義する先行技術からみて自明のものではない場合には、進歩性を有するものとされるが、所定の基準日は、常に国際予備審査の対象である国際出願の国際出願日である。
これは×だ!
だって、進歩性の判断日は、国際出願日じゃないよね?
優先権主張とかしたら、たしか「優先日」だよね!!
あと、「常に」が怪しすぎる(笑)
はい、大正解です!
順に条文を追ってみましょう!
第三十三条
特許協力条約 PCT Treaty (Japanese) (wipo.int)
国際予備審査
(1) 国際予備審査は、請求の範囲に記載されている発明が新規性を有するもの、進歩性を有するもの(自明のものではないもの)及び産業上の利用可能性を有するものと認められるかどうかの問題についての予備的なかつ拘束力のない見解を示すことを目的とする。
(2) 国際予備審査に当たつては、請求の範囲に記載されている発明は、規則に定義する先行技術のうちに該当するものがない場合には、新規性を有するものとする。
(3) 国際予備審査に当たつては、請求の範囲に記載されている発明は、所定の基準日に当該技術分野の専門家にとつて規則に定義する先行技術からみて自明のものではない場合には、進歩性を有するものとする。
まず、特許協力条約33条(1)に規定があって、
国際予備審査請求は、新規性、進歩性、産業上利用性の3つを審査するんだったよね!
うん!
で、今回は、その中の「進歩性の判断基準日」に関する出題なんだけど・・・
細かいところはPCT規則の方に記載があって、PCT規則64.1↓
第六十四規則
特許協力条約に基づく規則 (wipo.int)
国際予備審査における先行技術
64.1 先行技術
(a) 第三十三条(2)及び(3)の規定の適用上、世界のいずれかの場所において書面による開示(図面その他の図解を含む。)によつて公衆が利用することができるようにされているすべてのものは、先行技術とする。ただし、公衆が利用することができるようにされたことが基準日前に生じていることを条件とする。
(b) (a)の規定の適用上、基準日は、次の日とする。
(ⅰ) (ⅱ)及び(ⅲ)の規定が適用される場合を除くほか、当該国際予備審査の対象である国際出願の国際出願日
(ⅱ) 当該国際予備審査の対象である国際出願が先の出願に基づく優先権の主張を伴い、国際出願日が当該優先期間内である場合には、国際予備審査機関が当該優先権の主張を有効でないと判断した場合を除くほか、先の出願の日
(ⅲ) 当該国際予備審査の対象である国際出願が先の出願に基づく優先権の主張を伴い、国際出願日が当該優先期間の満了の日の後であるが、当該満了の日から二箇月の期間内である場合には、国際予備審査機関が、当該国際出願の国際出願日が当該満了の日の後であるという理由以外で当該優先権の主張を有効でないと判断した場合を除くほか、先の出願の日
(ⅱ)に優先権主張の場合は「先の出願日」と記載があるよね!
この「先の出願日」=「優先日」となります!
あれ!?「優先日」って何だっけ??と言う方の為にこちらに定義↓
第二条
定義(ⅹⅰ) 「優先日」とは、期間の計算上、次の日をいう。
特許協力条約 PCT Treaty (Japanese) (wipo.int)
(a) 国際出願が第八条の規定による優先権の主張を伴う場合には、その優先権の主張の基礎となる出願の日
(b) 国際出願が第八条の規定による二以上の優先権の主張を伴う場合には、それらの優先権の主張の基礎となる出願のうち最先のものの日
(c) 国際出願が第八条の規定による優先権の主張を伴わない場合には、その出願の国際出願日
ということで、答え×
(ロ) 国際予備審査に当たっては、請求の範囲に記載されている発明は、所定の基準日に当該技術分野の専門家にとって規則に定義する先行技術からみて自明のものではない場合には、進歩性を有するものとされるが、所定の基準日は、常に国際予備審査の対象である国際出願の国際出願日である。
答え×
理由:優先権主張の場合は「先の出願日」=「優先日」となるため(PCT規則64.1(ⅱ))
ハ
(ハ) 国際予備審査に当たって、国際調査報告に列記されたすべての文献を考慮に入れる必要はない。
なんか○っぽい・・・
別に全部の文献を考慮しなくてもいいんじゃないの?国際段階なんだし。
はい、私もそう思ったのですが・・・
答え×なんです。
条文に記載ありなので、確認しましょう!
第三十三条
国際予備審査(6) 国際予備審査に当たつては、国際調査報告に列記されたすべての文献を考慮に入れるものとし、更に、当該事案に関連があると認められる文献をも考慮に入れることができる。
特許協力条約 PCT Treaty (Japanese) (wipo.int)
PCT33条(6)によると、全ての文献を考慮しなければならない・・・だそう
ええー、これは間違えるわ・・・
(ハ) 国際予備審査に当たって、国際調査報告に列記されたすべての文献を考慮に入れる必要はない。
答え×
理由:全ての文献を考慮しなければならない(∵PCT33条(6))
ニ
(ニ) 請求の範囲が国際調査報告の作成されていない発明に関する場合であって、そのため国際予備審査の対象とならないときは、国際予備審査報告にその旨を表示する。
なんか○っぽい。
でもよく分からない・・・
はい、答え○で正解です。
順番に確認してみましょう!
PCT出願すると、国際調査期間(日本の場合、特許庁)が、国際調査報告(いわゆるISR)と、見解書(いわゆるWOSA)を作成してくれるんだったよね!
でも、国際調査報告(いわゆるISR)が作成されないケースがあるんだったね。例えば、数学の理論とか、情報の単なる提示とか、請求の範囲の記載が要件満たしていないとか、そういう場合は、国際調査報告(いわゆるISR)が作成されないのです。
その場合、国際調査報告(いわゆるISR)にその旨が表示されるんだったね(∵規則70.2(d))
第七十規則
国際予備審査機関による特許性に関する国際予備報告(国際予備審査報告)70.2 報告の基礎
(d) 請求の範囲が国際調査報告の作成されていない発明に関する場合であつて、そのため国際予備審査の対象とならないときは、報告にその旨を表示する。
特許協力条約に基づく規則 (wipo.int)
(ニ) 請求の範囲が国際調査報告の作成されていない発明に関する場合であって、そのため国際予備審査の対象とならないときは、国際予備審査報告にその旨を表示する。
答え○
理由:規則70.2(d)通り
ホ
(ホ) 締約国の選択が優先日から 19 月を経過する前に行われた場合には、特許協力条約第23 条の国内手続の繰延べの規定は、当該締約国については適用されず、当該締約国の国内官庁又は当該締約国のために行動する国内官庁は、優先日から 30 月の期間の満了前に、国際出願の審査及び他の処理を開始できる場合はない。
「できる場合はない」ってとこが怪しい~
なんかできる場合あるんじゃない?分かんないけど。
なので、答え×っぽい
はい、大正解です!
PCTの細かいところはなかなか全部追えきれなくって、そういう文脈から判断してくのも大事だよね!
早速条文で確認しましょう!
第四十条
特許協力条約 PCT Treaty (Japanese) (wipo.int)
国内審査及び他の処理の繰延べ
(1) 締約国の選択が優先日から十九箇月を経過する前に行われた場合には、第二十三条の規定は、当該締約国については適用しないものとし、当該締約国の国内官庁又は当該締約国のために行動する国内官庁は、(2)の規定が適用される場合を除くほか、前条に規定する当該期間の満了前に、国際出願の審査及び他の処理を開始してはならない。
(2) (1)の規定にかかわらず、選択官庁は、出願人の明示の請求により、国際出願の審査及び他の処理をいつでも開始することができる。
答えは、PCT40条(1)(2)にあって、国内審査の繰り延べについては、「出願人の明示の請求」があった場合は、処理が開始出来るんだね!
なので、答え×
(ホ) 締約国の選択が優先日から 19 月を経過する前に行われた場合には、特許協力条約第23 条の国内手続の繰延べの規定は、当該締約国については適用されず、当該締約国の国内官庁又は当該締約国のために行動する国内官庁は、優先日から 30 月の期間の満了前に、国際出願の審査及び他の処理を開始できる場合はない。
答え×
理由:「出願人の明示の請求」があった場合は、処理が開始出来るため(∵PCT40条(1)(2))
まとめ(R05短答・条約3)
【条約】3
特許協力条約に基づく国際出願に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いくつあるか。
(イ) 出願人以外の国際予備審査の請求により、国際出願が国際予備審査の対象とされる場合がある。
(ロ) 国際予備審査に当たっては、請求の範囲に記載されている発明は、所定の基準日に当該技術分野の専門家にとって規則に定義する先行技術からみて自明のものではない場合には、進歩性を有するものとされるが、所定の基準日は、常に国際予備審査の対象である国際出願の国際出願日である。
(ハ) 国際予備審査に当たって、国際調査報告に列記されたすべての文献を考慮に入れる必要はない。
(ニ) 請求の範囲が国際調査報告の作成されていない発明に関する場合であって、そのため国際予備審査の対象とならないときは、国際予備審査報告にその旨を表示する。
(ホ) 締約国の選択が優先日から 19 月を経過する前に行われた場合には、特許協力条約第23 条の国内手続の繰延べの規定は、当該締約国については適用されず、当該締約国の国内官庁又は当該締約国のために行動する国内官庁は、優先日から 30 月の期間の満了前に、国際出願の審査及び他の処理を開始できる場合はない。
1 1つ
2 2つ
3 3つ
4 4つ
5 5つ
答え:1
理由:ニのみ○。その他×
ブログでの内容はあくまで管理人の個人的な解釈であり、受験機関などの解答は参考にしておりません。また、その正確性を保証するものではありません。予め、ご了承くださいませ。間違い等気付かれた方はお問い合わせフォームからどうぞ宜しくお願い致します。
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