弁理士試験 短答の過去問(令和4年度)を1つずつ解説していきたいと思います!
全部で60問あるので、だいぶ時間かかると思いますが・・・^^
気長にお付き合い下さい★
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弁理士試験 短答 過去問 令和4年度【特許/実案】1
【特許・実用新案】1
特許法に規定する総則に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いくつあるか。
(イ) 被保佐人は、保佐人の同意を得ることなく、他人が保有する特許権に係る特許異議の申立てについて手続をすることができる。
(ロ) 手続をする者の委任による代理人である弁理士の代理権は、本人の死亡、本人である受託者の信託に関する任務の終了又は法定代理人の死亡若しくはその代理権の変更若しくは消滅によって消滅する。
(ハ) 甲及び乙が共同して特許出願をしたときは、当該特許出願についての出願公開の請求は、甲及び乙が共同してしなければならない。ただし、甲を代表者と定めて特許庁に届け出たときは、当該特許出願についての出願公開の請求は、甲が代表してすることができる。
(ニ) 特許管理人がない在外者の特許権については、特許庁の所在地をもって裁判籍を定めるにあたっての財産の所在地とみなす。question.pdf (jpo.go.jp)
(ホ) 特許出願人が死亡した場合であっても、審査手続についての委任による代理人があるときは、審査は中断しない。
1 1つ
2 2つ
3 3つ
4 4つ
5 なし
(イ)
(イ) 被保佐人は、保佐人の同意を得ることなく、他人が保有する特許権に係る特許異議の申立てについて手続をすることができる。
保佐人・被保佐人って出てくるけど、それ何だっけ?
じ、実は、改めて考えると、私もあんまりよく分かって無くって・・・
特許法では、保佐人・被保佐人・成年後見人・・・とか出てくるよね!
ちょっと調べてみました!
良くまとまっているサイトがありましたので、こちら↓
被保佐人(本人)とは、精神上の障害や認知症により判断能力が相当低下してしまった(著しく不十分となった)人のようです。
その人=被保佐人に代わって重要な手続きをするのが、保佐人です。
特許法では、保佐人・被保佐人が登場するのが7条です!
条文はこちら。
(未成年者、成年被後見人等の手続をする能力)
第七条 未成年者及び成年被後見人は、法定代理人によらなければ、手続をすることができない。ただし、未成年者が独立して法律行為をすることができるときは、この限りでない。
2 被保佐人が手続をするには、保佐人の同意を得なければならない。
3 法定代理人が手続をするには、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。
4 被保佐人又は法定代理人が、その特許権に係る特許異議の申立て又は相手方が請求した審判若しくは再審について手続をするときは、前二項の規定は、適用しない。
特許法 | e-Gov法令検索
原則、被保佐人は保佐人の同意なしで手続きは不可(∵7条2項)。だけど、異議申立されたりした場合は同意なしで手続きできる(∵4項)という構成になっています。
7条4項+2項で、異議申立のときは、同意不要になっているね!
はい。
異議申立の手続きのときは、2項は適用しないとなっているので、同意は不要となります。
なんで、同意不要なんだろ?
同意を必要とすると、手続き遅延の可能性があり、相手方に不利益だからと言われています。
ふむふむ。
じゃあ、答え○だよね!
最初、私もそう思ったのですが・・・
よーく読んで下さい、設問を!!
設問では、「他人が保有する特許権に係る」特許異議の申立てとなっています!
え?
それがどうしたの??
7条4項も、よーく読んで下さい!何の異議申立になっているか?
「その特許権に係る」特許異議の申立てとなっています!
「その特許権に係る」特許異議の申立て、つまり、被保佐人(本人)=権利者側=特許権者ということになります。つまり、7条4項は、被保佐人(本人)が権利者側で異議申立される側の場合、保佐人の同意なしで、手続き可能という内容になっています。
これは、同意を必要とすると、手続き遅延の可能性があり、相手方に不利益だからですよね。
一方、今回の設問では、「他人が保有する特許権に係る特許異議の申立て」となっており、被保佐人(本人)は異議申立する側=他人の特許を潰す側となっています。その場合は、原則の7条2項通り、保佐人の同意必要となります。
ということで、答え×
えー、だまされた・・・
しょっぱなから難しい・・・
その他には、被保佐人・保佐人関係で、よく出題されることとして、
「権利化前の手続きで、被保佐人が保佐人の同意なしでできる手続きはない」
ということがありますので、併せて覚えておきましょう!
はーい!
(イ) 被保佐人は、保佐人の同意を得ることなく、他人が保有する特許権に係る特許異議の申立てについて手続をすることができる。
答え×
理由:被保佐人(本人)が異議申立される側の場合、保佐人の同意なしで、手続き可能だが(∵7条4項+2項)、設問のような被保佐人(本人)が異議申立する側の場合、原則通り、保佐人の同意必要となるため(∵7条2項)
(ロ)
(ロ) 手続をする者の委任による代理人である弁理士の代理権は、本人の死亡、本人である受託者の信託に関する任務の終了又は法定代理人の死亡若しくはその代理権の変更若しくは消滅によって消滅する。
これ、総則に条文あったよね?
代理権の不消滅、11条ですね!
代理権の不消滅っていうからには、答え×っぽいんだけど・・・
でも質問の意味が良く分からなくって・・・
法定代理人とか委任代理人とか・・・どう違うの?
ですよね。
改めて考えると私も11条をちゃんと理解できて無くって。
とりあえず、条文を確認してみましょう!
特許法11条
(代理権の不消滅)
第十一条 手続をする者の委任による代理人の代理権は、本人の死亡若しくは本人である法人の合併による消滅、本人である受託者の信託に関する任務の終了又は法定代理人の死亡若しくはその代理権の変更若しくは消滅によつては、消滅しない。
特許法 | e-Gov法令検索
まず、条文をよく理解するために、例えを考えてみると
委任による代理人=弁理士
本人=特許出願頼んできた人(※個人の発明家のおっちゃんみたいなのを勝手に想定)
法定代理人=親(※子が出願人で親が法定代理人みたいなのを勝手に想定)
(間違ってたらゴメンナサイ)
そう想定すると、
弁理士の代理権は、
特許出願頼んできた人の死亡等、
子が出願人のときの親の死亡等
では消滅しないってことなんだね!
なんでだろ??
民法では、原則、本人死亡で代理権消滅(∵民法111条1項)ですが、それをそのまま特許法でも適用すると、不都合があるからです。
個人の発明家のおっちゃんの特許出願を引き受けたとして、おっちゃん死亡でいきなり弁理士の代理権なくなったら、期限内に手続きしなければいけないことたくさんあるのに、おっちゃん側が困るよね?却って、不利益だよね??
なので、代理権の不消滅の規定があるのです。
ということで、11条から、答え×
(ロ) 手続をする者の委任による代理人である弁理士の代理権は、本人の死亡、本人である受託者の信託に関する任務の終了又は法定代理人の死亡若しくはその代理権の変更若しくは消滅によって消滅する。
答え×
理由:消滅しない(∵11条)
(ハ)
(ハ) 甲及び乙が共同して特許出願をしたときは、当該特許出願についての出願公開の請求は、甲及び乙が共同してしなければならない。ただし、甲を代表者と定めて特許庁に届け出たときは、当該特許出願についての出願公開の請求は、甲が代表してすることができる。
共同の場合、不利益行為は全員で手続きしなきゃダメってやつだよね!
そうそう。
特許法14条です。
(複数当事者の相互代表)
第十四条 二人以上が共同して手続をしたときは、特許出願の変更、放棄及び取下げ、特許権の存続期間の延長登録の出願の取下げ、請求、申請又は申立ての取下げ、第四十一条第一項の優先権の主張及びその取下げ、出願公開の請求並びに拒絶査定不服審判の請求以外の手続については、各人が全員を代表するものとする。ただし、代表者を定めて特許庁に届け出たときは、この限りでない。
特許法 | e-Gov法令検索
うん。これこれ。
で、今回の設問では、出願公開の請求。
これも不利益行為だったよね?
不利益行為でも代表者を定めたら、代表者のみで手続きできるんだよね??
ということで、答え○かな?
久々読んでみたら、私も間違えてしまったのですが・・・
残念、答えは×
えー、なんで?
14条では、
不利益行為以外=いわゆる利益行為、例えば補正などの手続きをするとかは、単独で手続きできますよ。でも、代表者を定めたら、代表者のみがその利益行為の手続きをできますよ。
という構造です(不利益行為で代表者を定めたら・・・とかは何も触れていないのです)。
不利益行為については、代表者を定めていたとしても、やはり全員で手続きしないといけないのです!!
ぎゃー、そうなんだ・・・
ちなみに、出願公開の請求が不利益行為?なんで??と思われた方の為に追記。
出願公開は、原則、出願から1年半を経過したら行われますが、出願公開の請求(64条の2)により、1年半待たずして出願公開させることができます。
しかし、早期に公開することで、例えば、自社の新商品の技術を知られてしまったり、自社で関連出願しようとしたらその出願が公開されたせいで新規性を否定されてしまったりと、デメリットもあります。
慎重に判断しなければいけないため、不利益行為として、単独で公開請求ができないようになっています。
(ハ) 甲及び乙が共同して特許出願をしたときは、当該特許出願についての出願公開の請求は、甲及び乙が共同してしなければならない。ただし、甲を代表者と定めて特許庁に届け出たときは、当該特許出願についての出願公開の請求は、甲が代表してすることができる。
答え×
理由:出願公開の請求は14条に記載されている不利益行為。不利益行為については、代表者を定めていたとしても、全員で手続きしないといけないため(いわゆる利益行為のときは、代表者を定めたら、代表者のみがその利益行為の手続きをできるだけ)
(ニ)
(ニ) 特許管理人がない在外者の特許権については、特許庁の所在地をもって裁判籍を定めるにあたっての財産の所在地とみなす。
特許管理人・・・在外者のときに出てくる人だったよね・・・
そうそう。
で、特許管理人がいない在外者のときの裁判籍なんだけど・・・
特許管理人がいるときは、その人の住所とかだよね・・・
でも、特許管理人いないとなるとどうなるんだろう・・・
在外者の住所とかにしたら意味不明だろうし、特許庁になりそうな気がする・・・
はい。
その通りです。
条文で確認してみましょう!
15条
(在外者の裁判籍)
第十五条 在外者の特許権その他特許に関する権利については、特許管理人があるときはその住所又は居所をもつて、特許管理人がないときは特許庁の所在地をもつて民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第五条第四号の財産の所在地とみなす。
特許法 | e-Gov法令検索
特許管理人がないときは特許庁の所在地をもつてと記載されていますね!
なので、答え○
(ニ) 特許管理人がない在外者の特許権については、特許庁の所在地をもって裁判籍を定めるにあたっての財産の所在地とみなす。
答え○
理由:15条
(ホ)
(ホ) 特許出願人が死亡した場合であっても、審査手続についての委任による代理人があるときは、審査は中断しない。
あれ?
さっきもこんな感じの出題なかった?
上の(ロ)よ!
(ロ)は、委任代理人の代理権の話ね!
これは、中断の話だね!
あ、そっか・・・
(ロ)と同じ理由で、中断しない気がするけど。
本人いなくとも手続きしてくれる人=委任代理人がいるんだから・・・
そうだね。
中断に関する条文は22~24条と続くのですが、
この設問に関係する24条を確認しましょう!
民事訴訟法の準用だね!
(手続の中断又は中止)
第二十四条 民事訴訟法第百二十四条(第一項第六号を除く。)、第百二十六条、第百二十七条、第百二十八条第一項、第百三十条、第百三十一条及び第百三十二条第二項(訴訟手続の中断及び中止)の規定は、審査、特許異議の申立てについての審理及び決定、審判又は再審の手続に準用する。この場合において、同法第百二十四条第二項中「訴訟代理人」とあるのは「審査、特許異議の申立てについての審理及び決定、審判又は再審の委任による代理人」と、同法第百二十七条中「裁判所」とあるのは「特許庁長官又は審判長」と、同法第百二十八条第一項及び第百三十一条中「裁判所」とあるのは「特許庁長官又は審判官」と、同法第百三十条中「裁判所」とあるのは「特許庁」と読み替えるものとする。
特許法 | e-Gov法令検索
(訴訟手続の中断及び受継)
第百二十四条 次の各号に掲げる事由があるときは、訴訟手続は、中断する。この場合においては、それぞれ当該各号に定める者は、訴訟手続を受け継がなければならない。
一 当事者の死亡 相続人、相続財産の管理人、相続財産の清算人その他法令により訴訟を続行すべき者
・・・省略・・・
2 前項の規定は、訴訟代理人がある間は、適用しない。
・・・省略・・・
民事訴訟法 | e-Gov法令検索
特許法24条+民訴法124条6号と2項を合わせて読むと、
当事者の死亡は本来中断となるんだけれども、委任代理人がいるときは中断とならないんだね!
ということで答え○
(ホ) 特許出願人が死亡した場合であっても、審査手続についての委任による代理人があるときは、審査は中断しない。
答え○
理由:特許法24条+民訴法124条6号と2項を合わせて読むと、当事者の死亡は本来中断となるんだけれども、委任代理人がいるときは中断とならないため。
まとめ(R04短答・特許/実案1)
【特許・実用新案】1
特許法に規定する総則に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いくつあるか。
(イ) 被保佐人は、保佐人の同意を得ることなく、他人が保有する特許権に係る特許異議の申立てについて手続をすることができる。
(ロ) 手続をする者の委任による代理人である弁理士の代理権は、本人の死亡、本人である受託者の信託に関する任務の終了又は法定代理人の死亡若しくはその代理権の変更若しくは消滅によって消滅する。
(ハ) 甲及び乙が共同して特許出願をしたときは、当該特許出願についての出願公開の請求は、甲及び乙が共同してしなければならない。ただし、甲を代表者と定めて特許庁に届け出たときは、当該特許出願についての出願公開の請求は、甲が代表してすることができる。
(ニ) 特許管理人がない在外者の特許権については、特許庁の所在地をもって裁判籍を定めるにあたっての財産の所在地とみなす。
(ホ) 特許出願人が死亡した場合であっても、審査手続についての委任による代理人があるときは、審査は中断しない。
1 1つ
2 2つ
3 3つ
4 4つ
5 なし
答え:2
理由:二とホが○、その他×のため
ブログでの内容はあくまで管理人の個人的な解釈であり、受験機関などの解答は参考にしておりません。また、その正確性を保証するものではありません。予め、ご了承くださいませ。間違い等気付かれた方はお問い合わせフォームからどうぞ宜しくお願い致します。
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