弁理士試験 短答 過去問 令和5年度【特許・実用新案】17

短答・令和5年度
記事内に広告が含まれています。
さかいろ
さかいろ

では、次に短答 過去問 令和5年度【特許・実用新案】17を見ていきます!!

短答 過去問 令和5年度【特許・実用新案】16はこちら↓

ブログでの内容はあくまで管理人の個人的な解釈であり、受験機関などの解答は参考にしておりません。また、その正確性を保証するものではありません。予め、ご了承くださいませ。間違い等気付かれた方はお問い合わせフォームからどうぞ宜しくお願い致します。

弁理士試験 短答 過去問 令和5年度【特許・実用新案】17

令和5年度弁理士試験

短 答 式 筆 記 試 験 問 題 集

【特許・実用新案】17
特許法第 29 条の2(いわゆる拡大された範囲の先願)及び第 39 条(先願)に関し、次のうち、正しいものは、どれか。

ただし、特に文中に示した場合を除いて、特許出願は、外国語書面出願、国際出願に係る特許出願、特許出願の分割に係る新たな特許出願、出願の変更に係る特許出願又は実用新案登録に基づく特許出願ではなく、取下げ、放棄又は却下されておらず、出願公開が行われ、出願審査の請求がされ、査定又は審決が確定しておらず、設定の登録がされておらず、いかなる補正もされておらず、いかなる優先権の主張も伴わず、発明者・出願人の異動もないものとする。


1 甲は、発明イをし、発明イを明細書に記載した特許出願Aをした。後日、甲及び乙は、発明イを改良した発明ロをしたうえで、甲及び乙共同で発明イ、ロを包含する上位概念の発明ハを特許請求の範囲に記載した特許出願Bをした。その後、特許出願Aは、出願公開された。この場合、特許出願Bの発明ハについては、特許出願Aを特許出願の日前の他の特許出願として、特許法第 29 条の2の規定による拒絶理由を有することはない。


2 甲は、発明イをし、発明イを明細書に記載した特許出願Aをした。その後甲は、発明イを改良した発明ロをし、明細書に発明イ及びロを記載して特許出願Aを先の出願として優先権の主張を伴う特許出願Bを特許出願Aの 11 月後にした。他方、乙は、自ら発明イをし、特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Cを特許出願Aの6月後にした。その後、特許出願Aは取り下げたものとみなされ、特許出願Bは出願公開された。この場合、特許出願Cの発明イについては、特許出願Bの明細書に記載された発明と同一であることを理由として、特許法第 29 条の2の規定による拒絶理由を有する。


3 甲は、発明イをし、発明イを明細書に記載した特許出願Aをした。その後、乙は、自ら発明イをし、特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Bをした。その後、特許出願Aは出願公開され、出願審査の請求がされたが、特許出願Aについて拒絶をすべき旨の査定が確定した。この場合、特許出願Bの発明イについては、特許出願Aの明細書に記載された発明と同一であることを理由として、特許法第 29 条の2の規定による拒絶理由を有することはない。


4 甲は、発明イをし、発明イを外国語で記載した明細書を含む特許協力条約に基づく国際出願Aをした。国際出願Aは、後日国際公開がされ、また、指定国に日本国を含むものであったが、甲は、適式に明細書の日本語による翻訳文を提出しなかったため、特許出願とみなされた国際出願A(国際特許出願A)は最終的に取り下げられたものとみなされた。一方、乙は、自ら発明イをし、特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Bを、国際出願Aの国際出願日よりも後であって国際公開の日よりも前の日に行った。この場合、特許出願Bの発明イについては、国際出願日における国際出願Aの明細書に記載された発明と同一であることを理由として、特許法第 29 条の2の規定による拒絶理由を有する。


5 甲は、自ら発明イをし、明細書及び特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Aをしようとしたが、明細書が添付されていなかったため、特許庁長官からの通知を受けて適式に手続補完書を提出した。一方、乙は、自ら発明イをし、特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Bを、甲が特許出願Aの願書を提出した日よりも後であって手続補完書を提出した日よりも前の日に行った。この場合、特許出願Bの発明イについては、特許出願Aの明細書に記載された発明と同一であることを理由として又は特許出願Aに係る発明と同一であることを理由として、それぞれ特許法第 29 条の2の規定又は特許法第 39 条の規定による拒絶理由を有することはない

question.pdf (jpo.go.jp)
さかいろ
さかいろ

な、長い・・・涙

こりゃ読むだけで一苦労・・・

1

1 甲は、発明イをし、発明イを明細書に記載した特許出願Aをした。後日、甲及び乙は、発明イを改良した発明ロをしたうえで、甲及び乙共同で発明イ、ロを包含する上位概念の発明ハを特許請求の範囲に記載した特許出願Bをした。その後、特許出願Aは、出願公開された。この場合、特許出願Bの発明ハについては、特許出願Aを特許出願の日前の他の特許出願として、特許法第 29 条の2の規定による拒絶理由を有することはない。

さかいろ
さかいろ

29の2の問題オンパレードだね!

しっかり1つずつ見ていきたいと思います^^

とりあえず条文29の2から・・・

第二十九条の二 特許出願に係る発明が当該特許出願の日前の他の特許出願又は実用新案登録出願であつて当該特許出願後に第六十六条第三項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した特許公報(以下「特許掲載公報」という。)の発行若しくは出願公開又は実用新案法(昭和三十四年法律第百二十三号)第十四条第三項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した実用新案公報(以下「実用新案掲載公報」という。)の発行がされたものの願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面(第三十六条の二第二項の外国語書面出願にあつては、同条第一項の外国語書面)に記載された発明又は考案(その発明又は考案をした者が当該特許出願に係る発明の発明者と同一の者である場合におけるその発明又は考案を除く。)と同一であるときは、その発明については、前条第一項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。ただし、当該特許出願の時にその出願人と当該他の特許出願又は実用新案登録出願の出願人とが同一の者であるときは、この限りでない。

特許法 | e-Gov法令検索

29の2の適用要件を分かりやすく、ざっくりまとめてみたいと思います!

要件は5つだったよね!!

  • 29の2の適用要件
  • 1.後願前に先願あり
  • 2.後願後に先願が出願公開等
  • 3.後願の特許請求の範囲が、先願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、図面に記載された発明と同一
  • 4.先願と後願の出願人が後願時に同一の場合は適用除外
    • 出願人が同一=完全に一致必要
    • ∵発明が盗用されて盗用者が出願して、真の発明者が後の出願となってしまった場合、拒絶されるのは酷のため、適用除外
  • 5.先願と後願の発明者が同一の場合は適用除外
    • 発明者が同一=完全に一致必要
    • ∵自己の先願によって拒絶されるのは酷のため、適用除外

これに問題1を適用していくと・・・

1.後願(B)前に先願(A)あり=○

2.後願(B)後に先願(A)が出願公開=○

3.後願(B)の特許請求の範囲(ハ=イロの上位概念)が、先願(A)の出願当初の明細書、特許請求の範囲、図面に記載された発明(イ)と同一=○

※コレは後願Bの特許請求の範囲がハであるものの、ハはイロの上位概念との記載ありのため、先願Aの明細書に記載された発明イと同一なので、○ですよね!!

4.先願と後願の出願人が後願時に同一=×・・・先願Aは出願人・甲、後願Bは出願人・甲+乙のため

※一部同一でも×。∵完全一致が必要のため。

5.先願と後願の発明者が同一の場合は適用除外=??発明者ははっきり明記されていないし、ちょっと分からず。

さかいろ
さかいろ

4つめの条件、出願人が後願時同一の適用条件が×のため、29の2の拒絶理由は普通に通知されるよね!

なので、答え×

1 甲は、発明イをし、発明イを明細書に記載した特許出願Aをした。後日、甲及び乙は、発明イを改良した発明ロをしたうえで、甲及び乙共同で発明イ、ロを包含する上位概念の発明ハを特許請求の範囲に記載した特許出願Bをした。その後、特許出願Aは、出願公開された。この場合、特許出願Bの発明ハについては、特許出願Aを特許出願の日前の他の特許出願として、特許法第 29 条の2の規定による拒絶理由を有することはない。

答え×

理由:出願人が後願時同一の適用条件が×のため、29の2の拒絶理由は普通に通知されるため

2

2 甲は、発明イをし、発明イを明細書に記載した特許出願Aをした。その後甲は、発明イを改良した発明ロをし、明細書に発明イ及びロを記載して特許出願Aを先の出願として優先権の主張を伴う特許出願Bを特許出願Aの 11 月後にした。他方、乙は、自ら発明イをし、特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Cを特許出願Aの6月後にした。その後、特許出願Aは取り下げたものとみなされ、特許出願Bは出願公開された。この場合、特許出願Cの発明イについては、特許出願Bの明細書に記載された発明と同一であることを理由として、特許法第 29 条の2の規定による拒絶理由を有する。

さかいろ
さかいろ

ややこしい・・・

要するに、他の出願(甲)の優先権の基礎出願Aと優先権伴う出願Bとの間に、乙の出願Cがあり、基準日はAもしくはBのどっちで判断されるの??ってことだよね。

まだ分かりにくいかな・・・

つまり、29の2の先願(=他の出願)の基準日が、国内優先権主張を伴う場合、先の出願日なの?実際の出願日なの?ってとこの質問だよね。

ここは間違いやすいとこなので、ポイントをまとめておきたいと思います!

さかいろ
さかいろ

後願=本願=自分側なのか

先願=他の出願=引例側なのかで

29の2の適用に関する基準日が違いますので、分けてまとめます!

  • 後願=本願=自分が出願する側
    • 分割、変更出願、実案登録に基づく特許出願
      • 原出願日(44条2項、46条6項、46条の2第2項)
    • 国内優先件の主張
      • 先の出願日(41条2項)
    • パリ条約の優先権の主張
      • 第1国出願日(パリ4条B、∵不利な取り扱いを受けない)
  • 先願=他の出願=引例側
    • 分割、変更出願、実案登録に基づく特許出願
      • 実際の出願日(44条2項但し書き、46条6項、46条の2第2項但し書き)
      • 新規事項か否かなど要件具備するかまで第三者に監視させるのは酷のため、一律に遡及効なし
    • 国内優先件の主張
      • 実際の出願日(41条2項に規定なし)
    • パリ条約の優先権の主張
      • 第1国出願日(パリ4条B、∵不利な取り扱いを受けない)
さかいろ
さかいろ

ややこしいですね~

引例側の分割や国内優先は、基準日が「実際の出願日」になるわけですが、そちらが例外なので私はそれを覚えています。

(特許出願の分割)

第四十四条 

 前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。ただし、新たな特許出願が第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案法第三条の二に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用及び第三十条第三項の規定の適用については、この限りでない。

(出願の変更)

第四十六条 

 第四十四条第二項から第四項までの規定は、第一項又は第二項の規定による出願の変更の場合に準用する。

(実用新案登録に基づく特許出願)

第四十六条の二 

 前項の規定による特許出願は、その願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が当該特許出願の基礎とされた実用新案登録の願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にあるものに限り、その実用新案登録に係る実用新案登録出願の時にしたものとみなす。ただし、その特許出願が第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案法第三条の二に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用並びに第三十条第三項、第三十六条の二第二項ただし書及び第四十八条の三第二項の規定の適用については、この限りでない。

(特許出願等に基づく優先権主張)

第四十一条 

 前項の規定による優先権の主張を伴う特許出願に係る発明のうち、当該優先権の主張の基礎とされた先の出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面(当該先の出願が外国語書面出願である場合にあつては、外国語書面)に記載された発明(当該先の出願が同項若しくは実用新案法第八条第一項の規定による優先権の主張又は第四十三条第一項、第四十三条の二第一項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)若しくは第四十三条の三第一項若しくは第二項(これらの規定を同法第十一条第一項において準用する場合を含む。)の規定による優先権の主張を伴う出願である場合には、当該先の出願についての優先権の主張の基礎とされた出願に係る出願の際の書類(明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面に相当するものに限る。)に記載された発明を除く。)についての第二十九条、第二十九条の二本文、第三十条第一項及び第二項、第三十九条第一項から第四項まで、第六十九条第二項第二号、第七十二条、第七十九条、第八十一条、第八十二条第一項、第百四条(第六十五条第六項(第百八十四条の十第二項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)並びに第百二十六条第七項(第十七条の二第六項、第百二十条の五第九項及び第百三十四条の二第九項において準用する場合を含む。)、同法第七条第三項及び第十七条、意匠法第二十六条、第三十一条第二項及び第三十二条第二項並びに商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第二十九条並びに第三十三条の二第一項及び第三十三条の三第一項(これらの規定を同法第六十八条第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、当該特許出願は、当該先の出願の時にされたものとみなす

特許法 | e-Gov法令検索

第4条 優先権

B.すなわち,A(1)に規定する期間の満了前に他の同盟国においてされた後の出願は,その間に行われた行為,例えば,他の出願,当該発明の公表又は実施,当該意匠に係る物品の販売,当該商標の使用等によつて不利な取扱いを受けないものとし,また,これらの行為は,第三者のいかなる権利又は使用の権能をも生じさせない。優先権の基礎となる最初の出願の日前に第三者が取得した権利に関しては,各同盟国の国内法令の定めるところによる。

パリ条約 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)
さかいろ
さかいろ

これでようやく前置きが終了して、設問に戻れるのですが・・・

ポイントだけですが、他の出願(甲)の優先権の基礎出願Aと、優先権伴う出願Bとの間に、乙の出願Cがあります!

先願=他の出願=引例側が国内優先件の主張伴う場合実際の出願日(=Bの方の出願日)となります。なので、甲の出願Bは、乙の出願Cよりも後になりますので、29の2の適用はなしとなります。

なので、答え×

2 甲は、発明イをし、発明イを明細書に記載した特許出願Aをした。その後甲は、発明イを改良した発明ロをし、明細書に発明イ及びロを記載して特許出願Aを先の出願として優先権の主張を伴う特許出願Bを特許出願Aの 11 月後にした。他方、乙は、自ら発明イをし、特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Cを特許出願Aの6月後にした。その後、特許出願Aは取り下げたものとみなされ、特許出願Bは出願公開された。この場合、特許出願Cの発明イについては、特許出願Bの明細書に記載された発明と同一であることを理由として、特許法第 29 条の2の規定による拒絶理由を有する。

答え×

理由:先願=他の出願=引例側が国内優先件の主張伴う場合、基準日は実際の出願日(=Bの方の出願日)となります。なので、甲の出願Bは、乙の出願Cよりも後になりますので、29の2の適用はなし

3

3 甲は、発明イをし、発明イを明細書に記載した特許出願Aをした。その後、乙は、自ら発明イをし、特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Bをした。その後、特許出願Aは出願公開され、出願審査の請求がされたが、特許出願Aについて拒絶をすべき旨の査定が確定した。この場合、特許出願Bの発明イについては、特許出願Aの明細書に記載された発明と同一であることを理由として、特許法第 29 条の2の規定による拒絶理由を有することはない。

さかいろ
さかいろ

これもすごく重要な問題ですよね!

拒絶査定確定による先願の地位が残るかどうか・・・

拒絶査定確定による先願の地位が残るかどうか、29条の2(拡大先願)と39条(先願)の場合と違いましたよね。

このあたりをまとめていきたいと思います!

  • 29条の2(拡大先願)と39条(先願)との関係
  • 先願が放棄・取下・却下・拒絶査定確定などの場合
    • 29条の2(拡大先願)
      • 公開等されていれば、先願の地位あり(∵新規な発明を公開するという趣旨に合致)
    • 39条(先願)
      • 原則、先願の地位なし(∵初めからなかったものとみなされるため 39条5項)
      • 注意:同日出願で協議不能、不調の場合は先願の地位残る(39条5項但し書き)∵抜駆けNG

(先願)

第三十九条 

 特許出願若しくは実用新案登録出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、又は特許出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したときは、その特許出願又は実用新案登録出願は、第一項から前項までの規定の適用については、初めからなかつたものとみなす。ただし、その特許出願について第二項後段又は前項後段の規定に該当することにより拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定したときは、この限りでない。

特許法 | e-Gov法令検索
さかいろ
さかいろ

ということで、出願Aの拒絶査定が確定しようが、先願の地位ありなので、

29の2の適用はあり

なので答え×

3 甲は、発明イをし、発明イを明細書に記載した特許出願Aをした。その後、乙は、自ら発明イをし、特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Bをした。その後、特許出願Aは出願公開され、出願審査の請求がされたが、特許出願Aについて拒絶をすべき旨の査定が確定した。この場合、特許出願Bの発明イについては、特許出願Aの明細書に記載された発明と同一であることを理由として、特許法第 29 条の2の規定による拒絶理由を有することはない。

答え×

理由:出願Aの拒絶査定が確定しようが、先願の地位ありなので、29の2の適用はあり(39条との違いに注意!)

4

4 甲は、発明イをし、発明イを外国語で記載した明細書を含む特許協力条約に基づく国際出願Aをした。国際出願Aは、後日国際公開がされ、また、指定国に日本国を含むものであったが、甲は、適式に明細書の日本語による翻訳文を提出しなかったため、特許出願とみなされた国際出願A(国際特許出願A)は最終的に取り下げられたものとみなされた。一方、乙は、自ら発明イをし、特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Bを、国際出願Aの国際出願日よりも後であって国際公開の日よりも前の日に行った。この場合、特許出願Bの発明イについては、国際出願日における国際出願Aの明細書に記載された発明と同一であることを理由として、特許法第 29 条の2の規定による拒絶理由を有する。

さかいろ
さかいろ

これも基本だけど重要な問題ですよね!

国際出願翻訳文未提出で取下げ擬制のとき、拡大先願の地位あるの?ないの?ってとこだよね。

答えは・・・拡大先願の地位はありません!!

根拠は184条の13かっこ書き

(特許要件の特例)

第百八十四条の十三 第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案登録出願が国際特許出願又は実用新案法第四十八条の三第二項の国際実用新案登録出願である場合における第二十九条の二の規定の適用については、同条中「他の特許出願又は実用新案登録出願であつて」とあるのは「他の特許出願又は実用新案登録出願(第百八十四条の四第三項又は実用新案法第四十八条の四第三項の規定により取り下げられたものとみなされた第百八十四条の四第一項の外国語特許出願又は同法第四十八条の四第一項の外国語実用新案登録出願を除く。)であつて」と、「出願公開又は」とあるのは「出願公開、」と、「発行が」とあるのは「発行又は千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約第二十一条に規定する国際公開が」と、「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面」とあるのは「第百八十四条の四第一項又は実用新案法第四十八条の四第一項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面」とする。

特許法 | e-Gov法令検索

国際出願で翻訳文未提出で、取下げ擬制されていまったものについては、拡大された先願の地位が生じません。

これは、国内出願としての効果が確定するのは、翻訳文の提出+手数料納付等の所定の手続きをした後のためです。

なので、答え×

4 甲は、発明イをし、発明イを外国語で記載した明細書を含む特許協力条約に基づく国際出願Aをした。国際出願Aは、後日国際公開がされ、また、指定国に日本国を含むものであったが、甲は、適式に明細書の日本語による翻訳文を提出しなかったため、特許出願とみなされた国際出願A(国際特許出願A)は最終的に取り下げられたものとみなされた。一方、乙は、自ら発明イをし、特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Bを、国際出願Aの国際出願日よりも後であって国際公開の日よりも前の日に行った。この場合、特許出願Bの発明イについては、国際出願日における国際出願Aの明細書に記載された発明と同一であることを理由として、特許法第 29 条の2の規定による拒絶理由を有する。

答え×

理由:国際出願で翻訳文未提出で、取下げ擬制されていまったものについては、拡大された先願の地位が生じないため(184条の13かっこ書き)

5

5 甲は、自ら発明イをし、明細書及び特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Aをしようとしたが、明細書が添付されていなかったため、特許庁長官からの通知を受けて適式に手続補完書を提出した。一方、乙は、自ら発明イをし、特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Bを、甲が特許出願Aの願書を提出した日よりも後であって手続補完書を提出した日よりも前の日に行った。この場合、特許出願Bの発明イについては、特許出願Aの明細書に記載された発明と同一であることを理由として又は特許出願Aに係る発明と同一であることを理由として、それぞれ特許法第 29 条の2の規定又は特許法第 39 条の規定による拒絶理由を有することはない

さかいろ
さかいろ

手続き保管した場合の出願日の認定のはなしだね!

出願日の認定は38条の2

(特許出願の日の認定)

第三十八条の二 特許庁長官は、特許出願が次の各号のいずれかに該当する場合を除き、特許出願に係る願書を提出した日を特許出願の日として認定しなければならない。

 特許を受けようとする旨の表示が明確でないと認められるとき。

 特許出願人の氏名若しくは名称の記載がなく、又はその記載が特許出願人を特定できる程度に明確でないと認められるとき。

 明細書(外国語書面出願にあつては、明細書に記載すべきものとされる事項を第三十六条の二第一項の経済産業省令で定める外国語で記載した書面。以下この条において同じ。)が添付されていないとき(次条第一項に規定する方法により特許出願をするときを除く。)。

 特許庁長官は、特許出願が前項各号のいずれかに該当するときは、特許を受けようとする者に対し、特許出願について補完をすることができる旨を通知しなければならない。

 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、その補完をすることができる。

 前項の規定により補完をするには、経済産業省令で定めるところにより、手続の補完に係る書面(以下「手続補完書」という。)を提出しなければならない。ただし、同項の規定により明細書について補完をする場合には、手続補完書の提出と同時に明細書を提出しなければならない。

 第三項の規定により明細書について補完をする場合には、手続補完書の提出と同時に第三十六条第二項の必要な図面(外国語書面出願にあつては、必要な図面でこれに含まれる説明を第三十六条の二第一項の経済産業省令で定める外国語で記載したもの。以下この条において同じ。)を提出することができる。

 第二項の規定による通知を受けた者が第三項に規定する期間内にその補完をしたときは、その特許出願は、手続補完書を提出した時にしたものとみなす。この場合において、特許庁長官は、手続補完書を提出した日を特許出願の日として認定するものとする。

特許法 | e-Gov法令検索

明細書が添付されていないときは出願日は認定されません(38条の2第1項第3号)。

長官から手続保管の通知が来るので、出願人は、通知から2ヶ月以内に、手続保管書を提出します。この手続保管書を提出した日が出願日として認定されるわけです。(38条の2第6項)

なので、答え○

5 甲は、自ら発明イをし、明細書及び特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Aをしようとしたが、明細書が添付されていなかったため、特許庁長官からの通知を受けて適式に手続補完書を提出した。一方、乙は、自ら発明イをし、特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Bを、甲が特許出願Aの願書を提出した日よりも後であって手続補完書を提出した日よりも前の日に行った。この場合、特許出願Bの発明イについては、特許出願Aの明細書に記載された発明と同一であることを理由として又は特許出願Aに係る発明と同一であることを理由として、それぞれ特許法第 29 条の2の規定又は特許法第 39 条の規定による拒絶理由を有することはない

答え○

理由:手続補完書を提出した日=出願日として認定される(38条の2第6項)。そのため、乙の出願Bが先願となるため、29の2や39条は関係なし

まとめ(R05短答・特実17)

【特許・実用新案】17
特許法第 29 条の2(いわゆる拡大された範囲の先願)及び第 39 条(先願)に関し、次のうち、正しいものは、どれか。

ただし、特に文中に示した場合を除いて、特許出願は、外国語書面出願、国際出願に係る特許出願、特許出願の分割に係る新たな特許出願、出願の変更に係る特許出願又は実用新案登録に基づく特許出願ではなく、取下げ、放棄又は却下されておらず、出願公開が行われ、出願審査の請求がされ、査定又は審決が確定しておらず、設定の登録がされておらず、いかなる補正もされておらず、いかなる優先権の主張も伴わず、発明者・出願人の異動もないものとする。


1 甲は、発明イをし、発明イを明細書に記載した特許出願Aをした。後日、甲及び乙は、発明イを改良した発明ロをしたうえで、甲及び乙共同で発明イ、ロを包含する上位概念の発明ハを特許請求の範囲に記載した特許出願Bをした。その後、特許出願Aは、出願公開された。この場合、特許出願Bの発明ハについては、特許出願Aを特許出願の日前の他の特許出願として、特許法第 29 条の2の規定による拒絶理由を有することはない。


2 甲は、発明イをし、発明イを明細書に記載した特許出願Aをした。その後甲は、発明イを改良した発明ロをし、明細書に発明イ及びロを記載して特許出願Aを先の出願として優先権の主張を伴う特許出願Bを特許出願Aの 11 月後にした。他方、乙は、自ら発明イをし、特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Cを特許出願Aの6月後にした。その後、特許出願Aは取り下げたものとみなされ、特許出願Bは出願公開された。この場合、特許出願Cの発明イについては、特許出願Bの明細書に記載された発明と同一であることを理由として、特許法第 29 条の2の規定による拒絶理由を有する。


3 甲は、発明イをし、発明イを明細書に記載した特許出願Aをした。その後、乙は、自ら発明イをし、特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Bをした。その後、特許出願Aは出願公開され、出願審査の請求がされたが、特許出願Aについて拒絶をすべき旨の査定が確定した。この場合、特許出願Bの発明イについては、特許出願Aの明細書に記載された発明と同一であることを理由として、特許法第 29 条の2の規定による拒絶理由を有することはない。


4 甲は、発明イをし、発明イを外国語で記載した明細書を含む特許協力条約に基づく国際出願Aをした。国際出願Aは、後日国際公開がされ、また、指定国に日本国を含むものであったが、甲は、適式に明細書の日本語による翻訳文を提出しなかったため、特許出願とみなされた国際出願A(国際特許出願A)は最終的に取り下げられたものとみなされた。一方、乙は、自ら発明イをし、特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Bを、国際出願Aの国際出願日よりも後であって国際公開の日よりも前の日に行った。この場合、特許出願Bの発明イについては、国際出願日における国際出願Aの明細書に記載された発明と同一であることを理由として、特許法第 29 条の2の規定による拒絶理由を有する。


5 甲は、自ら発明イをし、明細書及び特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Aをしようとしたが、明細書が添付されていなかったため、特許庁長官からの通知を受けて適式に手続補完書を提出した。一方、乙は、自ら発明イをし、特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Bを、甲が特許出願Aの願書を提出した日よりも後であって手続補完書を提出した日よりも前の日に行った。この場合、特許出願Bの発明イについては、特許出願Aの明細書に記載された発明と同一であることを理由として又は特許出願Aに係る発明と同一であることを理由として、それぞれ特許法第 29 条の2の規定又は特許法第 39 条の規定による拒絶理由を有することはない

答え:5

理由:5のみ○のため

ブログでの内容はあくまで管理人の個人的な解釈であり、受験機関などの解答は参考にしておりません。また、その正確性を保証するものではありません。予め、ご了承くださいませ。間違い等気付かれた方はお問い合わせフォームからどうぞ宜しくお願い致します。

コメント

タイトルとURLをコピーしました